定年退職セレモニーの思い出

会社からの「感謝状」を震える手で受け取っていました。
震える手と声で、巻紙を少しずつ拡げながら答辞を読み上げていました。
これまで長年社業に従事され、色々な思い出がよみがえってくるのでしょう、声を詰まらせながら読み上げていました。
私は総務部長の役に就いた2年間、24回の定年セレモニーに立ち会ってきました。
定年退職される方々に対して、感謝の気持ちを込めてお送りするのは総務部の大事な仕事です。
従業員約5000人ちょっとの工場でしたから毎月、定年退職者を見送ってきました。
11時から取締役(本社では社長)から一人一人に感謝状と記念品が渡されます。その後に代表が答辞を述べます。
その後に昼食会です。シャンパンで乾杯をします。
乾杯の音頭は私の役割でした。
乾杯の後に食事、懇談に入ります。少しの時間ですが、入社してからの思い出話に花が咲きます。
昼食会場から外に出ると溢れるばかりの職場の仲間が待っています。
色々な人がいます。職場の仲間は勿論ですが、なぜか生命保険会社の女性、診療所の看護婦さん、・・・。
手には花束や贈り物、クラッカーを手に持っている人もいます。
定年退職者を真ん中に、左右を会社役員、私、会社幹部、職場の上司でかためて記念写真を撮ります。
記念撮影が終わると、それぞれが待っている職場の仲間の集まっている所に行き、花束や、贈り物をいただきます。クラッカーを鳴らす職場、胴上げをする職場、様々です。
最後のお別れをして、いよいよ社用車に乗っていただきます。
私が総務部長として着任する前までは、社用車に乗っていただき工場の門を出たら近くの駅で降りていただいていました。
それでは味気ないし、一生に一度のことですから、私の責任と権限で、自宅まで社用車で送らせていただくことに変えました。
黒塗りの車に乗ることなど一度もなかったでしょう。最初で最後の経験です。一人一人照れくさそうに乗ります。
工場の門に続く道の左右には大勢の人たちが立ち、一台ずつ見送ります。
最後の1台が工場からは見えなくなったところで、それぞれの職場に帰って行きます。
ほどなく午後の就業5分前を知らせるサイレンが鳴ります。
サイレンって時代を感じます。
なぜ、「定年退職セレモニー」の話になったかと言うと、昨日から合宿ミーティングに使っていたホテルの会議室の隣が「○○会社定年退職者懇談会」会場でした。
ちょっと昔のことを思い出したわけです。

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